1 愛知・蟹江町親子3人殺傷事件で中国人留学生に死刑判決

平成21年に愛知県蟹江町で起きた母子3人殺傷事件について、犯行を行った中国人留学生林振華被告(31)に対し、名古屋地方裁判所の裁判員裁判は求刑どおり死刑判決を下した。
この事件では、強盗に入られた家人のうち2人が死亡し、後から帰宅した3男のみが助かっている。

2 事件概要

この事件は平成21年に愛知県蟹江町で起きた。夜9時から10時ころ(推定)、蟹江町の住宅に男が押し入った。男は当時在宅していた母親をモンキーレンチで殺害。母親殺害後1時間ほどして帰宅した二男も襲い殺害した。
さらに犯人は午前2時ころ帰宅した3男にも襲いかかりかなりの傷を負わせたが、殺害までには至らなかった。
犯人は3男を後ろ手に縛り上げると、証拠隠滅のため部屋の血を拭いたり自分の衣服を洗濯機で洗濯するなど実に10時間以上も現場に留まっている。その際3男とも何度か会話をしているが、片言の日本語だったという。
そして昼になっても出勤してこない次男を心配した勤務先の上司が警察官とともに家を訪れ、すでに亡くなっていた次男と自ら出てきた三男を発見し事件が発覚した。警察官が家を訪れた時も犯人はまだ現場に留まっていたようだが、すきを見て逃走した。
蟹江町母子3人殺傷事件

3 犯人逮捕に至るまで

この事件では、遺留品なども多かったため犯人逮捕は時間の問題と思われた。しかし逃走した男の行方はようとして知れず、早期解決には至らなかった。警察では、本件を捜査特別報奨金制度の対象に指定し、男の行方を追っていた。
捜査特別報奨金制度
そして平成24年になり、別の自動車窃盗事件で逮捕されていた三重大学の中国人留学生・林振華のDNAと本件の犯人が遺留したDNAが一致。そこで同容疑者を追及したところ犯行を認めた。

4 今回の裁判の特徴

今回の裁判は罪名が強盗殺人罪であるため、もちろん裁判員裁判となった。
裁判員裁判といえば、近時三鷹の女子高生ストーカー殺人などで裁判員が下した判決が上訴審で破棄される例が出ている。一般国民の法感情を量刑にも反映させる目的から始まった裁判員裁判の判決を裁判官だけで構成される上訴審が覆すことに批判もあるが、今回の裁判についてはおそらく上訴審でも死刑判決が予想される。何しろ何の落ち度もない被害者を2人も殺害し1人に重傷を負わせている強盗殺人事件だからだ。
これに対して弁護側は犯行そのものは認めるが、強盗の意思はなかったとして殺人罪と窃盗罪であると主張した。
これがどういう戦術かというと、強盗殺人罪の法定刑を回避して刑を軽くしてもらおうというものである。
強盗殺人罪は、その法定刑が死刑か無期懲役という極めて重い犯罪とされている(刑法240条)。
これに対し、殺人罪と窃盗罪となれば、殺人罪の下限が5年の懲役(刑法199条)となるため、見掛け上は軽くなる可能性があるのだ。
刑法
しかしそんな戦術もむなしく、死刑判決が下った。当然だと思う。今回の裁判員裁判が上訴審で覆らないことを祈ろう。